テーマ:組織マネジメント 意思決定プロセス 承認プロセス

組織内に蔓延するスタンプラリー文化と築地市場問題

 

従来より、日本の企業や行政機関では、物事を決める際、
いわゆる稟議書類に多くの責任者の承認をとる文化があるのは
ご承知のことと思います。

私自身のビジネス経験でも、最大10人もの承認印が必要なプロセスを行ったことがあります。 

重要な決め事の際に、より良い意思決定を行うため、
また、リスクの軽減のためにも、多様な立場の人間の目から内容を精査することは重要でしょう。

しかし、10もの承認印となると、
もはや、案件実行への合意、メリット、リスクを理解した上での承認プロセスではなく、
どれだけ“偉い人”の承認印を集めるか?という「手順」そのものが重要になっているように
も感じられます。

まるで、承認印を下から順に押印するスタンプラリーのようだと思うのです。

 

昨今、ニュースでも盛んに取り上げられている「築地市場移転問題」でも、
同様の、「スタンプラリー現象」が起きたのではないかと考察します。 

  ご存じのように、豊洲新市場では、既に関係者間で一度は合意され、
対外的に発表もされていた決定を覆す形で、
「盛り土」はしない”との結論が、
複数の担当者→市場長→都知事のスタンプラリーによって承認されていたようです。

関係者たちが、一連の問題の中で「記憶にない」に類する発言をしたことからも、
まさしく、承認する「中身」(=工事内容とその理由)
より手順が重視されているのが事実だと思われますし、
押印した当人たちにその認識が希薄なようにさえ見えます。

(真相は未だ闇のなかですが)

 

あなたの会社でも起きている?

 築地で起きていることは、対岸の火事ではありません。

毎日が多忙な承認責任者の皆様、熟考の伴わない目視による承認が増えてきていませんか?

「これだけ多くの人が承認しているなら大丈夫だろう」

「担当課長が承認しているから」

「いつもの承認依頼だから」

と言って、手続き重視でフリーパスの形骸押印をしていませんか? 

 どれだけプロセスを精緻化しても、人的ミス、誤発注や認識違いの承認はゼロにはできません。

また、承認内容によっては、組織に大きな損害を与える場合もあります。

このようなミスを無くす/最小限に抑えるためには、
承認の「プロセス」の見直しだけではなく、
承認に関わる全ての人の承認責任の重要性を再認識する必要があります。

 

承認する目的と意識の再確認


 組織における承認プロセスは、各部門やラインのリーダー(課長、部長、事業部長など)が、
案件内容や予算規模に合わせて、
自己の責任範囲で承認を行います。

 しかしながら、この承認プロセスがスタンプラリー化(形骸化)している場合、
「てにをは」や、お作法(誤字脱字や書き方)
に注意をはらう一方で、肝心の中身の吟味に目が行き届きづらくなります。 

 本来、決済プロセスに関わる承認者は、
承認をするに必要な背景情報(案件の目的、ゴール、現業務への影響、今後のタスク、
リスクなど)を明確に理解し、
関係者に対して十分なコミュニケーションを取った上で、
自身の役割と責任の重要性を理解し、
業務遂行に責任を持って意思決定しなくてはなりません。

 また、複数人で承認を行う本来意義は、様々な立場や役割で多面的に案件をアセスメントすることなのですから、
関係する多様な人々の業務と、案件本来の目的を結び、
確実に成果につなげる行動と意識を持つリーダーシップマインドが
不可欠なのですね。

 

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